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高槻の所長室

1957(昭和32)年

Director’s Office at Takatsuki

高槻にあった所長室では海外からの著名な研究者を迎えてきました。特に第8代所長の武居三吉は多くの研究者と交流があり、当時の写真が化学研究所に現存しています。
写真左から武居三吉、ヘルマン・シュタウディンガー教授、マグダ・シュタウディンガー夫人。ヘルマン・シュタウディンガーは「高分子化学の父」とされています。1952年に高分子化学の業績に対しノーベル化学賞を受賞。この来日では準国賓として、昭和天皇にも拝謁しています。マグダ・シュタウディンガーは植物学者で、このとき東京で開催された日本大学婦人協会主催の講演会で講演しました。

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Herman Staudinger(1881-1965年)ドイツ
写真は化学研究所の中庭にて
(1957年4月22日撮影)

ヘルマン・シュタウディンガーは、一群のコロイド的性質をもつ物質(ゴム、セルロース、澱粉、蛋白質など当時からポリマーと呼ばれていた化合物)が巨大な分子(高分子)からなることを主張しました。この「高分子説」は10年以上かけてようやく受け入れられ、合成高分子、合成繊維、プラスチックが開発されました。シュタウディンガーは高分子化学の父とされています。

1881年 ドイツ・ヴォルムスに生まれる
1912年 スイス連邦工科大学教授
1917年 炭素と炭素が鎖のように連続的につながるゴムの直鎖状構造をスイスの学会で発表
1920年 ドイツ化学会誌に天然ゴムは直鎖状の「高分子」であるという論文を発表

1924年 ピレスリンの化学構造を解明
1926年 ドイツフライブルク大学教授
1953年 
高分子化学の業績に対しノーベル化学賞を受賞

 

<シュタウディンガーとの交流>

野津龍三郎(第5代所長)は、1926年にドイツのフライブルク大学のシュタウディンガーの元に留学しました。その時、同じくドイツのカイザー・ヴィルヘルム化学研究所のクルト・ヘスの元に留学してきた桜田一郎(喜多源逸研究室)を、野津はパリで出迎えました。こののち、桜田とシュタウディンガーは高分子説において論争を繰り広げることとなりましたが、その後桜田はシュタウディンガーらの功績を認め、高分子化学の発展に大きく寄与しました。
一方、武居三吉(第8代所長)はピレスリンの化学構造に関してシュタウディンガーと交流がありました。
1957年4月にシュタウディンガー夫妻が来日した際、桜田はその講演旅行に同行しました。4月22日に夫妻は化学研究所も訪れ、武居が出迎えました。

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野津龍三郎(1892-1957年)
理学博士
有機化学

桜田一郎(1904-1986年)
工学博士
合成繊維・ビニロンの開発

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武居三吉(1896-1982年)
農学博士
農芸化学・農薬科学

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Adolf Butenandt(1903-1995年)ドイツ
写真は化学研究所の玄関にて
(1955年4月20日撮影)
1939年ノーベル化学賞

武居三吉は1928年から「ロテノン」の構造解明に取り組みました。同時代ドイツではブテナント、アメリカでは農商務省のラ・フォージェが取り組んでおり三つ巴の競争となりました。1932年に最終的には3カ国で同時に同一の化学構造を発表しました。

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Karl Freudenberg(1886-1978年)ドイツ
写真は化学研究所の玄関にて
(1958年5月6日撮影)
前列中央がフロイデンベルグ
右隣が武居三吉

武居三吉は1926年から2年間、ドイツのハイデルベルグ大学へ留学し、高分子化学で世界的に著名なカール・フロイデンベルグに師事しました。

参考文献

古川安「化学者たちの京都学派」(京都大学学術出版会))95-164項,2017

松本和男 「武居三吉(1896.10.26〜1982.6.25)」『和光純薬時報』78(3),28-31,2010
三枝武夫「第2回高分子の幕開け-Staudinger教授の偉大な業績-」『高分子』50(5),329-331,2001

野津龍三郎「Staudinger博士の印象」『高分子』3(8),375-377,1954

藤嶋昭 他『人物でよみとく化学』(朝日学生新聞社)136-137項, 2021


 

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